年末年始の思い出 其の二
1991年から1992年にかけての年越し。
僕がアルバイトをしていたお店は、オールナイト営業することになりました。
現代では、24時間営業なんてあたり前の時代ですが、当時はムリムリ!
だって「グリルはいつ洗うの?」「シェイクマシンの分解洗浄はどうすんの?」
というように、衛生管理上、難しかったんですね。
機器類の進歩によって、24時間営業が可能になったのではないでしょうか。
話を戻すと、
僕がアルバイトをしていたお店がオールナイト営業する、と言いましたが、
正しくは、23時にいったん閉店して、
1時間でクローズ作業とオープン作業を行い、
深夜0時に再オープンするというもの。
1991年12月31日の23時、通常通り「オールダウンプリーズ」の号令。
そこから、いつもの2倍増しのスピードで機器類の洗浄や殺菌を実施。
グリルフードも取り外して洗浄。
ケチャップやマスタードディスペンサーも一旦洗浄。
とにかく洗うものは洗って、直ぐにオープン準備が始まります。
1992年1月1日の0時。年が明けると同時に、お店もオープン。
こんな夜中にお客さん来るのかしら・・・
と思いきや、お客さん、来る来る!
これから初詣に行くのか、初詣帰りなのか、
というお客さんがたくさん来まして。
深夜なのにそこそこ忙しい。
当時は夜中に開いている飲食店なんて、
そんなに無かった時代ですからねぇ。
僕は、初めての深夜時間帯の勤務。
楽しさで眠気がぶっ飛んでいたなぁ、という
昔の思い出でした。
年末年始の思い出 其の一
年末年始と言えば、マクドナルドは連日ピークの状態になります。
もう毎日が土日って感じ。
連日ピークが続くという事は、それなりに資材関係のストックがいるのですが、
富士エコーの納品は当然お休み。
↓↓ 「早朝6時半の富士エコーの思い出」はコチラ
年末最後のエコー搬入日は、もうあふれんばかりの在庫量に!
一般品(常温でストックできる資材)はまだいいのですが、
冷凍品や冷蔵品は、とにかく冷凍・冷蔵庫に入れないとダメですからね。
まずは、厨房内のリーチイン冷凍・冷蔵庫を満タンにします。
そして、ファーストイン・ファーストアウトを行いながら、
スタッキング(段ボールを詰める数)に気を付けながら、
段ボールを積んで積んで、また積んで。
ウォークイン冷凍庫の中で遭難するぐらい、とにかく詰めまくるんです。
(今思えば、冷凍庫の冷却能力の限度など考えていなかった)
足の踏み場どころか、
資材を踏み台にして乗り越えていかないといけないくらい(汗)
それぐらい在庫量が多い!
ウォークイン冷凍庫の扉を開けたら資材の壁だった・・・
という状態になりました。
ただ、詰めまくるという事は、必要な時に取り出すのも大変。
「アレをこっちに動かして、コレをこっちにおいて」というように、
もうパズルゲームのような感じ。
Cクルーとかが、資材補充係に任命されて、1時間くらいかけて、
悪戦苦闘していました。
資材で満タンになった冷凍・冷凍庫はマクドナルドの年末年始の風物詩だなぁ、
という昔の思い出でした。
オールダウンプリーズの思い出。
マクドナルドで言う所の「クローズ」とは、
閉店業務、またはそのシフトのこと。
逆に、開店業務やそのシフトを「オープン」と言います。
↓↓「初めてのオープンシフト。」はコチラ
当時、僕がいたお店は23時閉店。
閉店後、厨房やカウンターの片づけをすることを「クローズ」と呼んでおりました。
深夜1時までの勤務。
22時頃になると、クローズシフトのクルーがイン(出勤)してくるわけですね。
主婦さんや大学生が多かったかな。
もう、一心不乱に後片付けをしていくわけです。
22時というとまだ営業中ですが、
片付けられるものは片付ける。洗えるものは洗っちゃう。
拭き上げたプレパレーションテーブルには、
ラップを貼って汚さないようにする徹底ぶり(笑)
23時ちょうど、閉店の時間。
クローズマネージャーの「オールダウンプリーズ!」のコールがかかります。
そのコールを聞いて、クローズクルーたちは一斉に機器の電源をOFF。
器具類の洗浄が始まるわけです。
グリルクリーナーで、グリル磨き。
茶色だった鉄板がシルバーになるのは驚き。
グリルフードを取り外して、シンクで洗浄。
シェイクマシンの部品をばらして、殺菌洗浄。
カウンターのドリンク類の片づけと、器具の洗浄。
とにかく、クローズはやることがいっぱい。
しかも午前1時までに終わりたいので、無駄口は叩かず、一心不乱に作業。
あー、忙しい忙しい! と必死でした。
ちなみに、23時にアップ(退勤)することを、
僕たちは「乙女クローズ」と呼んでおりました。
カウンターの大人の女子たちがアップするのが23時だったので、
そう呼ばれていたわけです。
閉店の23時、乙女クローズシフトのクルーは、
クローズクルーたちにあとを任せて、
ホッと一息つく瞬間が懐かしいなぁと感じる、昔の思い出でした。
クラムシェルグリル導入の思い出。
昔のマクドナルドでは、
ハンバーガーなどのミートを、平型の鉄板で焼いていました。
パティプレースメントに沿って冷凍ミートを正しく並べて、
20秒後にシアー(ミートを押さえつけて火の通りをよくする)。
そして、スパチュラを使って、1枚1枚ミートをターンしていく。
このターンに、熟練した技術が必要なわけですね。
↓↓「クルーの花形、グリル&バンマン」のお話はこちら
土日の昼ピークのグリルがまわせれば、クルーとして一人前!
というぐらい、本当にやりがいのある、花形のポジションだったわけです。
時代は流れて、クラムシェルグリルが導入されました。
クラムシェルグリルとは、天板付きのグリルで、
冷凍ミートを並べたあと、天板を降ろしてミートを鉄板で挟めば、
両面が自動で焼ける、という機械です。
ちょうど、巨大なホットサンドメーカーのような感じですね。
とても便利で、ミートの焼成時間も短縮され、
オペレーションも簡易になった、ということで、
万々歳のことが多いわけですが・・・。
でも、グリルポジションにやりがいを感じていた僕にとっては、
このクラムシェルグリルの導入が、非常に残念でなりませんでした。
グリルマンの腕の見せ所、「ターン」の工程が無くなったわけですから。
ミートをブロークン(ミートを潰してしまうの意)することなく、
焦げ付かないように素早くターンして、
ターンレイオーダーの時には、ターン後に素早く次のミートを焼き始める。
もう、この工程ができなくなるんだなぁと思うと、
感慨深いものがありました。
確かに、クラムシェルグリルは便利です。
先ほども言いましたように、工程は簡単。時間も短縮。
ブロークンする可能性も少ない。
いいことだらけなのですが・・・。
機器類が便利になるということは、技術が必要でなくなることにも等しい。
平型グリルでミートが焼けなくなったことで、
モチベーションが下がってしまった、昔の思い出でした。
プロダクションコーラーの思い出。
プロダクションコーラー(P/C)が初心者だった頃のおはなし。
現在の「メイド・フォー・ユー」は、いわゆる受注生産。
お客様の注文を受けてから、バーガー類の製造を行うシステムです。
1990年頃のマクドナルドはストック方式。
あらかじめ、売り上げを予測して、必要な数量のバーガー類を作り置きしておく。
そしてクオリティーが保たれる10分間がストックの限度。
ウエイトも出さず、ウエイストも出さないよう、
トランスファービン内のストック量を調整するのが「プロダクションコーラー」。
通称P/C。
当時のマクドナルドでは超花形のポジションです。
↓↓「超花形のポジション、プロダクションコーラー。」の記事はコチラ
P/Cは通常、マネージャーが担当します。
ですが、土日のアイドルタイムや平日の夜など、
ある程度お客様の流れが緩やかな時間帯は、
クルーの僕たちにも、その役目が回ってきたりするのです。
「綾園くん、ちょっとP/C入っといてー」とマネージャーからの指示。
僕は「ハイ、わかりましたー!」と張り切って返事。
意味もなく、お客さんもいないのに、
シューター式トランスファービンの後ろ側を陣取ったりして。
「ニューオーダー 4バーガープリーズ」とか言っちゃったりして(笑)
でもそんな時に限って、プチピークがやってきたりするんですよね。
ドライブスルーは渋滞するわ、ウエイトはいっぱいでるわで、
厨房内はもうひっちゃかめっちゃかになっているときに、
怖いマネージャーが厨房に戻ってくるんですよね・・・。
「何してんねん!4-2-2ダブルマック、2回入れろ!」とか怒号が飛ぶ。
4-2-2ダブルマックは面倒くさいなぁ、と思いながら・・・。
この4-2-2ダブルマックというのは、
・ハンバーガーまたはチーズバーガーが4個
・ダブルバーガーまたはダブルチーズバーガーが2個
・ビッグマックが2個
1回のオーダーで出来上がってくるオーダーなんですね。
1回のオーダーで、ミートが12枚までしか焼けないので、
バーガー、ダブル、マックを1度に上げようと思ったら、
この4-2-2ダブルマックになるわけですね。
P/Cは、少しの油断と、読み間違いをすることで、大きなウエイトを出してしまう、
とても重要なポジションなんですね。
僕も何度かP/Cを経験させてもらうことで、徐々に感覚が身についていき、
ある程度のピークでも回せるようになり、
後々にはAJCCにも出させてもらえるようなレベルにはなりました。
P/C初心者のころは、本当にウエイトとウエイストの嵐だったよなぁ、
という、恥ずかしい昔の思い出でした。
動画教材「看板に偽りあり」の思い出。
「マクドナルドは何でもマニュアル通りだ」と揶揄されたものですが、
実際のところはそんなことなかったですよ。
マニュアルは基本中の基本ですが、
とは言え、マニュアルでは表現されていないこともあります。
その時その時のお客様の表情を見て、
今何が必要か、何をすれば喜んでいただけるか、
どのようにすれば効率よくできるか、よい商品が提供できるか。
それは、“人”が考え、“人”が行動していたんです。
決してマニュアルにすべてが書かれているわけではなく、
決まったことしかできないわけではなかった。
と自負しております。
でも、マクドナルドのマニュアルはすごかった。
とても細かい。いろいろなことを想定して、それを文字で表現している。
僕は、マニュアルのつくり方に非常に感銘を受けました。
クルーが一番最初に見るマニュアルが「S・O・C」。
ステーション・オブザベーション・チェックリストの略。
マニュアルというよりチェックリストなんですが、書き方が細かいというか繊細。
確かに、SOCを見れば、誰でも統一的なオペレーションが可能だなと思いました。
まぁ、アルバイトを始めてから随分経ってから気づいたのですが・・・。
マクドナルドにはペーパーのマニュアルだけでなく、
動画教材(ビデオ)もありました。
30年前の事ですので記憶が定かではありませんが、
結構な本数があったと思います。
その中で、印象に残っているのが「看板に偽りあり」というビデオ。
アメリカの昔々のCM(1970年代~80年代と思われる)をベースに、
「広告で言っていることと現実は一緒なのか?」という事を、
あえて題材にした一本。
看板(広告)通りのQSC+Vは出来ていますか?
という事を投げかけるような、そんな内容でした。
映像の中に、男性クルー10名程で厨房の中を踊りながら掃除し、
エキサイトした男性クルーみんなでカウンターを飛び越える!
という衝撃的な映像が今も忘れられません。
このビデオだけ、何回も何回も見ました。
もう一度、「看板に偽りあり」の見たいなぁと思った、
昔の思い出でした。
チェンジオーバーの思い出 其の二
チェンジオーバーの思い出、の続き。
マクドナルドのチェンジオーバーとは、
午前10時に行われる、ブレックファーストメニュー(朝マック)から
レギュラーメニューへの切り替えのことです。
午前9時頃からチェンジオーバーの準備を開始して、
9時50分頃にはブレックメニューのラストオーダー。
ブレックの適正ストックが完了すれば、
ただちにレギュラーメニューを作り始めます。
これが午前9時55分ごろ。
10時インのクルーたちが5分前インしてくる頃です。
(始業の5分前にタイムカードを“ピッ”とするのがルール)
一番最初に出来上がったレギュラー商品は、
正しく仕上がっているかカリブレーション(試食の意。通称:カリブレ)します。
商品に問題なければ、
午前9時58頃にレギュラーメニューが
トランスファービン(バーガー類を温めてストックしておく機械)に並べられます。
その頃、カウンターでは、「トランスライト」の交換が行われます。
トランスライトとは、カウンター上部壁面にある大きなメニューボードのこと。
お客様の中には、
このチェンジオーバーの午前10時を狙ってカウンターに並び、
ブレックとレギュラーの両方を注文しようとする猛者もいるわけですね(笑)
なので、特に土日は、一時的にピークになりやすい。
ドライブスルーのメニューボードも、
180度クルッと回転し、レギュラーメニューに切り替わります。
そして午前10時。
「チェンジオーバー」の号令。
カウンターパーソンはリーフレットを交換(裏返す)。
ブレックメニューのストックが無くなった商品から順次終了し、
レギュラーメニューの販売に完全移行するわけです。
ウエイト(お客様を待たせるの意)もなく、
スムーズにチェンジオーバーが出来たときは、
そりゃもう、カ・イ・カ・ン!
土日のチェンジオーバーが上手に回ると、その日の昼ピークもスムーズにいけちゃう、
という、ジンクスがありました。
逆に、10時のチェンジオーバーで、
レギュラーメニューが出来上がってこなかったり、
もたついたり、ウエイトが出たり、クレームが出たりしたときは、
もう落ち込む落ち込む。
昼ピークもウエイトだらけで全然ダメ・・・。
というようなこともあった、
チェンジオーバーの思い出でした。