超花形のポジション、プロダクションコーラー。
マックでアルバイトをしていた1990年ごろ。
クルールームには、当時の社長「藤田 田氏」の写真が飾られていました。
お顔の下に「藤田 田(デン と発音してください)」と書いてあったのが
印象的でしたね。
さて、現在のマックは「メイド・フォー・ユー」というシステムです。
お客様の注文が入ってから製造を開始する受注生産方式ですね。
でも、昔のマックは、30分ごとに売り上げを予測して、
売れるであろうバーガー類を作り置きしておくストック方式でした。
トランスファービン(バーガー類を温めておく機械)に
バーガー類をストックしておくわけですが、
このストックできる時間(ホールディングタイム:HT)は、
出来上がってからわずか10分。
なので大量に作りすぎると、HTを過ぎてウェイスト(廃棄)してしまうわけです。
このストック方式。
過去の30分ごとの売上(アワリー)からデータを読み解きます。
例えば、同じ曜日の、同じ時間帯に、どのバーガーがどれくらい売れたか。
そこから、今日のこの時間帯は、
どのバーガーをどれくらいストックしておけば
ウエイト(お待たせするの意)を出さず、HT内に売り切ることができるか。
特にピークタイムには、そのような分析と管理が行われていたのです。
オーダーを管理するのは
「プロダクションコーラー(通称:PC)」と呼ばれるポジション。
店舗の中心的役割ですので、主にマネージャークラスの人が担当します。
お客様をお待たせしてはいけない。
かといって、商品をなるべく廃棄してはいけない。
という考え方は今も昔も変わりませんが、
1990年当時はこの絶妙なコントロールをするのが
PCの大きな役割だったのです。
なので、PCを「プロダクション・コントローラー」とも呼んでおりました。
PCが各ポジションにオーダーを入れるわけですが、
単発でオーダーする場合と、
「ストップがかかるまで作り続けて」という意味の「プルレイ」や「ターンレイ」
というオーダーも駆使します。
なんせ、一度ストックを切らした日にゃ、
カウンターもドライブスルーもウエイトの連発。
カウンター前は大混雑。ドライブスルーの車も大渋滞。
焦りから入れ忘れやクレームにもつながる。
最悪の負のスパイラルに入っていくわけです。
当時の製造時間は、ハンバーガー類で3分程。
ハンバーガーとチーズバーガーがMAXで12個。
またはビッグマックがMAXで6個。
これ、一度に焼けるミートの数が12枚だからなんですね。
ミート12枚の繰り返しで商品を製造していくわけです。
(プルレイやターンレイの説明はまた今度!)
ちなみにフィレオフィッシュは4分半。
フィレポーションを油で揚げるのに4分程度かかるからなんです。
このフィレオフィッシュも、一度ストックを切らすと、
なかなか次が出来上がってこない。
「じゃあ、ピークが来る前に多めに作っておけばいいんじゃない?」と
思われるかもしれませんが、そこは10分のHTがあるわけですよ。
10分間しかストックできないわけですね。
で、このPCはオーダーを入れるだけでなく、
ラッパー(バーガー類をラッピングする役割)も兼ねることが多いんです。
ハンバーガーやチーズバーガーは、
逆さまにしたバーガー類をラッピングペーパーの真ん中を置き、
縦にクルクルっと巻く。そして左と右の余分な部分をササッと下側に折り込む。
ん~、文字で表現するのは難しいですな。
このラッピングが遅いと、商品は出来上がっているのにお客様に提供できない。
つまり厨房内で渋滞が起こるわけです。
ウエイトも出さず、ウェイストも出さず、
オペレーションクルーやカウンターパーソンに効率よく指示を出す。
しかも素早いラッピング技術。
マクドナルドのホームページには
「天気や1週間前の同時間帯の販売個数、周辺のイベントの有無など
様々なデータから各バーガーの需要を高い精度で予測し、
それに応じて作る個数を指示。
現在AIがするようなことを、なんと人が行っていたのです。」
なんていう記載もあって。
なんかかっこいいなぁ。
PCは、当時のマクドナルドの仕事の中でも、超花形のポジションなのでした。